お酒にまつわる、ちょっとしたお話。

【こんな名言を知っていますか?】

蜷川幸雄さんの葬儀で吉田鋼太郎さんが読んだ弔辞に「シェークスピア君も交ぜてやって、一緒に芝居つくりましょう。」という一文があったそうです。

そのシェークスピアは、こんなセリフを書いています。
「俺に息子が千人いたとしても、
真先に教えてやる人間としての道は、
水っぽい酒は避けろだな
シェークスピア『ヘンリー四世』」

当店の水割りやソーダ割りなどは、30ml(1ショット)ではなく45mlで通常はご提供させていただいております。

【強壮性があり、夏負けを防ぐと言われています】

トニックウォーターとは、炭酸水に、香草類、レモン、ライム、オレンジなどの果皮のエキス分と糖分を配合した、イギリス生まれの飲料です。無色透明で、ほろ苦さとさわやかな風味を合わせもっています。
もともとは、熱帯植民地に働くイギリス人たちの暑気あたりや食欲不振を防ぐためにつくられた、キニーネを配合した清涼飲料でしたが、その後、口当たりが爽やかなところから女性たちの間でアペリティフとして好まれるようになりました。また第二次世界大戦後はジンとよく調和することから、「ジン・トニック」として世界的に飲まれるようになりました

【苦みは大人の味です】


イタリアのトリノでバーテンダーをしていたガスパーレ・カンパーリ(Gaspare Campari)が開発し、1860年、当時の流行に乗って「ビッテル・アルーソ・ドランディア」(Bitter All'uso d'Hollandia、オランダ風苦味酒)と名付けて売り出しました。

ガスパーレがつくったリキュールは人気商品になります。イタリア国王ウンベルト1世やイギリス国王エドワード7世も訪れるという名店になりました。

苦味は動物が毒物の摂取をさけるために発達した感覚だと考えられています。
また、人が成長するにつれて好むようになる味です。食に対する好奇心が旺盛な人ほど苦味のある食べ物を好む傾向も見られます。

【リキュールの最高峰と讃えられています】

作家の石川淳は、シャルトリューズ・グリーンへの最高の
讃辞をこう綴っています。

『こういふものを二杯以上のむバカはない。その一杯か二杯にしても、立ちながらにぐっとあふったのではなんの変哲もない。焼酎でものんだはうが気がきいてゐるだらう。ただそこに居ごこちのわるくないソファがあって、目のまへに大きいガラス窓があって、窓の外は巷のけしき、巷にはさみだれが霧のやうにふっていたとすれば、ひとりでゆっくりたのしむために、しぜんゆっくりのむことになるが、シャルトルーズの青という酒はぴったりして、今日は知らず、以前はそれが適してゐたやうである。このとき、その場に身を置くと、しゃれにのむという料簡はすでにしゃれといふものですらなく、ほんの一杯か二杯の時間はたちまち止まって永遠にひとしい。』

シャルトリューズについては、次回に続きます。

【製造法は修道士3人のみが知る秘伝です】

リキュールは、中世、スピリッツに各種薬草を配合して『不老不死の秘薬』として誕生しました。この秘薬づくりを熱心に研究したのは、それに専念できる環境と、高貴薬草を入手できる資産を持ったキリスト教団でした。

シャルトリューズの製造の歴史は、伝承によると1605年にフランス王アンリ4世の愛妾ガブリエル・デストレの兄であるフランソワ・アンニバル・デストレによって伝えたれた、といいます。その処方の薬草を入手するのは当時のパリでは難しく、実際にはつくられることはなかった、といわれています。
その処方がめぐりめぐって1764年にラ・グランド・シャルトリューズ修道院に伝わり、現在のシャルトリューズ・ヴェールの原型が誕生しました。
現在は民間会社に製造を委託しているものの、原料の薬草の配合は3人の修道士によって秘密裡に行われているそうです。

【人類最古のお酒です】

蜂蜜酒「ミード」の原料は、蜂蜜と水、そして酵母菌だけです。
その昔、のどを渇かせた狩人がクマなどに荒らされてひっくり返った蜂の巣に溜まっている雨水を偶然飲んだ時が最初の出会いであったと言われています。
紀元前から飲み継がれているというミード作りの様子は、エジプトの壁画にも描かれています。
英国のエリザベス女王Ⅰ世は、ハーブやスパイスを漬け込んで醸造した蜂蜜酒「メセグリン」(Metheglin)を愛飲したといわれています。ハーブとアルコールで血行が良くなり、体が温まって熟睡でき体力回復できることから「薬(メディスン)」の語源になっています。ワインのようにそのままでも、炭酸飲料やジュースで割っても楽しめます。

【惚れ薬に用いられたキャラウェイが入っています】

キュンメルとはドイツ語でキャラウェイ(ひめういきょう)のことです。
キュンメル・リキュールはキャラウェイを主にアニスやクミン、レモンピールなどで香り付けをした無色透明の甘い薬草系リキュールです。
帝政ロシア時代、オランダを訪問したピョートル大帝がこの酒を大いに気に入り、製法をロシアに持ち帰ってバルト海沿岸のリガのアラッシュ荘園で造らせたのがアラッシュ・キュンメル。
現在はオランダ・ドイツ・ベルギーなどで生産されています。

【ミントジュレップはケンタッキーダービー公式カクテルです】

アメリカ、ケンタッキー州ルイビルにあるチャーチルダウンズ競馬場で行われる、アメリカ競馬界の最高峰のレースが、ケンタッキーダービーです。そのダービーのオフィシャルドリンクとして有名なのが「ミントジュレップ」
バーボン・ウイスキーをベースにフレッシュミントと甘みを加えたロングカクテルです。
レース当日競馬場では、何万杯もミントジュレップが飲まれるという話です。

【レブヒートはスペインのお祭りの飲み物です】

【冬季限定のカクテルです】

「アイリッシュコーヒー」は1940年代後半、アイルランド西海岸にあるシャノン空港のレストラン・バーのチーフバーテンダー、ジョー・シェリダンが考案しました。

航空機の航続距離が短く、パリやロンドンからでさえ大西洋をダイレクトに横断できなかった時代、シャノン空港に立ち寄り給油してからカナダ東端のガンダー空港を目指し旅立って行きました。
冬、給油の為に機外に降ろされ、極寒の中を空港待合室にやってくる乗客の為にジョーは冷え切った身体を温めるカクテルとしてコーヒーに特産のアイリッシュウィスキーを入れ、また酪農の盛んな国柄を印象づけるために生クリームを浮かべ滑らかな口当たりにする。これが乗客たちに評判となり世界中に広まっていきました。

【オリンピックとお酒について】

五輪の起源となった古代オリンピックは、入場こそ無料とはいえ、観戦するのもなかなかの苦行だったようです。
・ギリシャに降り注ぐ容赦ない日光。おまけに雷雨の時でも浴びっぱなし。
・早朝から16時間立ったまま。
・蠅や害虫にも容赦ないほど襲われる。
・不衛生で下痢や発熱を訴える者が多数。
・観客の汗は猛烈に臭い。
・観戦中の食事は、硬く正体がわからないチーズやパンを怪しい行商人が売るのみ
・川は干上がっていて水不足で、水分補給はワインのみ。
・一般客は野宿と自炊で乗り切らねばならない。
当時、奴隷に対して「反抗的だな。お前をオリンピック観戦させてやろうか!」と脅すこともあったほどだとか。

オリンピックは神に捧げる祝典。
酒の神であるディオニソスに祈りを捧げるといえば、ワインは飲み放題です。競技場周辺はこうしたワイン屋台だらけでした。ワイン屋台はもともと都市部にあり、やや格が劣るものとして庶民的とされています。でもオリンピック観戦者はそんなことはお構いなし。好き放題に飲んだくれました。
古代ギリシャのワインは、アルコール度が15-16%と高いことが特徴です。現在のものは平均12.5%程度。ブドウの種やカスも浮かんでいて、強烈な味でした。
そのため、酒豪でもなければ、いったん漉してから水で薄めることが一般的な飲み方でした。ワイン2:水3で薄めたのです。
こうした屋台ではヒヨコマメ、生イチジク、スライスしたソーセージ、ビーツ、豚肉の塩漬け等がおつまみに出されたとか。

スポーツ観戦しながらお酒を楽しむ、古代も現代も変わりません。